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働き方改革の概要と現状は?見えてきた課題と解消法、成功事例を解説

働き方改革とは、一億総活躍社会の実現を目的として労働環境を根本的に見直す取り組みです。2019年に働き方改革関連法が施行され、各企業が課題解消に取り組んでいます。本記事では働き方改革の概要と課題、その解消法、さらには改革実現の実例を解説します。

働き方改革の概要

働き方改革とは、一億総活躍社会の実現を目的とした労働環境の見直しの取り組みです。2018年6月に働き方関連法案が成立し、2019年4月より順次、施行されており、国の主導のもと推進されています。

ここでは働き方改革が目指す社会とはどのようなものなのか、そして働き方改革が推進された背景は何なのかを解説しましょう。

働き方改革が目指す社会とは

働き方改革が目指す社会とは一億総活躍社会です。この言葉が意味する主なものは、次の3つになります。

1つ目は、働きたい人が働ける場所を提供できる社会ということになるでしょう。2つ目は、多様化する働き方に対応する社会です。そして3つ目は、公平で働きやすい環境を提供できる社会ということになるでしょう。

働き方改革が推進された背景

働き方改革が推進された背景には、日本が抱える3つの課題が大きく関係しています。1つ目の課題は少子高齢化による労働人口の減少です。この課題を解消するためには、高齢者や育児や介護で就労できない人の働ける環境作りが効果的と期待できます。

2つ目の課題は長時間労働と過労死問題です。働き方改革を推進することによって、これらの課題の解消を目指しています。

3つ目の課題は労働生産性の低さです。主要先進国の中で日本の労働生産性の低さが顕著になっており、働き方改革を推進して、労働の効率化を図ることが急務となっています。働き方改革が推進されている背景には、これらの課題を解消したいという国の狙いがあるといえるでしょう。

働き方改革の3つのポイント

働き方改革を推進する上では、日本の企業の古くからある体質を根本から刷新する必要があります。しかし、長期間にわたって定着してきた企業の制度や風土を変えていくのは簡単ではありません。大きなポイントとなるのは次の3つです。

  1. 長時間労働の是正
  2. 正社員と非正規の格差是正
  3. 多様で柔軟な働き方の実現

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.長時間労働の是正

働き方改革によって働きやすい環境を実現するためには、長時間労働を是正することが不可欠となります。かつては長時間労働をすることが美徳とされる風潮がありましたが、長時間労働は働き手のメンタルの不調や過労死をもたらすものです。

また、離職率が上がってしまう要因にもなっています。長時間労働の常態化は深刻な問題です。早急に長時間労働を是正し、働きやすい環境を作ることが求められています。

2.正社員と非正規の格差是正

働き方改革を実現する上では、正社員と非正規の格差を是正することも重要なポイントとなります。幅広い人材を確保するためには、多様な雇用形態に対応していく必要があるからです。

同じ仕事をしていながら正社員と非正規と間で待遇に格差があることにより、非正規という働き方を選択している働き手のモチベーションが低下することも考えられるでしょう。公平性という観点からも、格差の是正は必須です。

2020年4月から適用されている「同一労働同一賃金制度」は、こうした状況を踏まえて働き会改革の一環として作られました。ただし、同一労働の判断が難しいなど、課題があるのが現状です。

3.多様で柔軟な働き方の実現

多様で柔軟な働き方を実現することによって、これまで就業することができなかった人たちの働く場所の選択肢が広がることが期待できます。自宅でのリモートワークが可能になれば、育児や介護をしながら仕事をすることも不可能ではなくなるからです。

また、1つの会社だけで働くのではなく、複数の会社で働くことも可能になるでしょう。多様な働き方が選択できるようになると同時に、企業側もさまざまな働き方を提供する方向に向かっていくと予測されます。

コロナ禍が働き方改革に与えた2つの影響

新型コロナウイルスの感染拡大が、働き方改革に与えた影響は大きいといえるでしょう。働き方だけでなく、生き方も含めたライフスタイル全般において、人々の意識の変化があったと考えられるからです。

働き方改革に与えた影響を大きく分けると、次の2点になるでしょう。

  1. 働き方や働く場所の多様化が加速
  2. 働き方に対する意識の変化

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.働き方や働く場所の多様化が加速

新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークが増加したことが、働き方や働く場所の多様化を加速させたのは間違いないでしょう。リモートワークによって通勤時間がなくなり、すき間時間が生まれることで育児や介護と仕事との両立も可能になってきました。

自宅だけでなく、サテライトオフィスや旅先で仕事をする働き方が広がったのも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きいといえそうです。職種や仕事の内容によっては、会社から遠く離れた地方に移住して仕事を続けることが可能な場合もあるでしょう。

しかし、働き方や働く場所の多様化は働き方改革の目指す方向性に沿ったものではありますが、自宅でのリモートワークによって、長時間労働や不規則な時間帯の勤務を助長するケースも出てきています。ツールによって勤怠状況を確認するなど、新たな課題に対応することも求められるでしょう。

2.働き方に対する意識の変化

新型コロナウイルスの感染拡大はリモートワークの増加だけでなく、働き方に対する意識の変化をももたらしました。これまで当たり前だったことが当たり前でなくなり、場所や時間にとらわれない働き方への注目度が高くなっていることも特徴的です。

ワークとバケーションが一体となった、ワーケーションという働き方は象徴的といえるでしょう。長期休暇や有給休暇が取りやすくなり、ワークライフバランスの向上につながることも期待できます。また、働き方とともに生き方も変化してきました。

2020年5月から6月にかけて内閣府で行われた「新型コロナウイルス感染症の影響下における⽣活意識・⾏動の変化に関する調査」によると、新型コロナウイルスの感染拡大以降、「生活を重視するようになった」と答えた人が約50%います。「仕事を重視するようになった」と回答した人は約5%です。ワークからライフへと意識が変わってきていることがわかるでしょう。

将来的なリスクに備えるために副業や兼業を始める層が一定数いる一方、副業や兼業をやってみたことによって、本業の良さに気が付いたという層もいます。本業と副業と兼業をトータルで踏まえた上での働き方のチェックも、今後の働き方改革に求められる要素といえそうです。

内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における⽣活意識・⾏動の変化に関する調査」

働き方改革の導入で浮き彫りになった3つの課題

働き方改革を進めていくことによって、浮き彫りになってきた課題もあります。働き方改革がすべての企業にとって、プラスに働くとは限りません。大きな変化への対応に苦労している中小企業は少なくないからです。働き方改革によって生まれた課題の主なものは以下の3つとなります。

  1. 働き方の変化によるコストの増加
  2. 生産性や売上げの低下
  3. 管理職・中間管理職の負担増

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.働き方の変化によるコストの増加

働き方が変化することによって、コストが増加するケースがあります。長時間労働の是正によって一人あたりの労働時間が少なくなることに伴い人員を増やすことでコストも増加するからです。

また同一労働同一賃金制度によって、これまで低く抑えられていた非正規の賃金が高くなることによっても人件費が増加します。

その他にも仕事の効率化を図るために、ツールを導入する際にもコストが増加するでしょう。コストがネックとなって、ツールの導入を進められない企業も少なくありません。

2.生産性や売上げの低下

働き方改革を推し進めて社員の労働時間を短縮した結果、完了しない業務が発生したり日常の業務に支障をきたしたりする可能性もあります。生産性が向上しないどころか、生産性と売上がともに低下してしまうケースもあるでしょう。

結果的に経営に行き詰まり倒産やリストラの要因となってしまい、働き方改革が逆効果になってしまう危険性も少なからずあります。

3.管理職・中間管理職の負担増

働き方改革を進めることによって、働き方や人事制度、労働時間、労働環境などを見直すことになるため、企業側にも社員の側にも負担がかかる時期が発生します。一時的なものであれば対処の方法もあるでしょう。しかし、負担がかかる時期が長期化する可能性もあります。

社員の負担を減らそうとすると管理職や中間管理職など、特定の層に負担が集中することになるので注意が必要です。

働き方改革の課題の3つの解消方法

働き方改革を進めていく上ではさまざまな課題が出てくることが予想されます。働き方改革が本格的にスタートしてからまだ数年しかたっておらず、改善の余地がたくさんあるからです。

働き方改革によって、これまでの仕組みや制度が大きく変わることになるので、社内のさまざまな部署や人間に負荷がかかる部分も出てきます。コストの増加、生産性や売上の減少など、企業の存続にかかわる課題が生じる可能性もあるでしょう。

主な対応策として考えられるのは次の3つです。

  1. 課題の可視化と共有
  2. ITツールの積極的な活用
  3. 各種補助金・助成金の活用

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.課題の可視化と共有

働き方改革で課題が生じた場合には、その課題を可視化することと社内で共有することが重要です。課題を特定して可視化するためには、現場の声を丁寧に聞くことが不可欠となります。まず現状を把握して、課題を可視化していくのが一般的な手順です。

課題を可視化した後に、経営陣や関係部署など、社内で共有します。さらに課題に優先順位をつけていきます。優先順位のつけ方は重要性の高さ、緊急性の高さです。さらに各部署と連携を取りながら、課題の対策を考えていきます。

2.ITツールの積極的な活用

働き方改革を効果的に進めていく上ではITツールの積極的な活用が大きなポイントになります。生産性の向上において、ITツールの果たす役割は大きいからです。人手不足の解消、業務の効率化など、根本的な課題の解消にもつながることが期待できます。

ITツールを活用する場合には、まずメリットを理解することが必要でしょう。生産性の向上や業務の効率化以外にも、社員間のコミュニケーションの円滑化、ワークバランスの実現など、さまざまなメリットが見込まれます。

ITツールを活用して社員の勤怠状況を可視化することによって、社員の労働環境の向上に役立てることもできるでしょう。

3.各種補助金・助成金の活用

働き方改革の取り組みを行っている企業に対しては、国や自治体から各種補助金や助成金を受け取ることができます。補助金や助成金を活用することで、働きやすい環境を作ることが可能です。主なものを2つ紹介しましょう。

働き方改革推進支援助成金は、中小企業や小規模事業者を対象とした助成金です。生産性の向上と労働時間の削減の取り組みを支援する目的で支給され、2021年11月の時点で取り組みの内容別に4つのコースに分かれています。

労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、労働時間適正管理推進コース、団体推進コースの4つです。それぞれ支給条件や金額、締め切りが異なるので、確認が必要になります。

詳しくはこちらのページの「働き方改革推進支援助成金」の項目を参照してください。
それぞれのコース名をクリックすると、さらに詳細を確認することができます。

キャリアアップ助成金は同一労働同一賃金の実施を踏まえたもので、非正規労働者のスキルアップ、処遇改善、正社員化などの取り組みに対して支給される制度です。対象となるのは中小企業で、支給条件や金額などの確認が必要になります。

2021年11月の時点では、正社員化コース、障害者正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度等共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コースという7つのコースが設定されています。
詳しくはこちらのページを参照してください。

働き方改革の導入での成功事例3つ

働き方改革を導入し、社員の働きやすい環境を作りながら、企業としての営業成果を出している企業も数多くあります。特徴的な取り組みを行っている事例として、以下の3つの企業があげられます。

  1. 7時間労働で新たな価値の創造を目指す味の素
  2. 働き過ぎを防ぐ柔軟な働き方を推進するベネッセ
  3. 「全国、どこでも」を実現するトヨタ自動車

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.7時間労働で新たな価値の創造を目指す味の素

味の素は「7時間労働で新たな価値を創造する会社」という目標を掲げて、働き方改革を行っている会社です。

朝礼廃止、会議の大幅削減、営業社員の直行許可、サテライトオフィスの設置、在宅ルールの大幅な緩和など、仕事の徹底した効率化を推し進めることによって、残業時間を削減するだけでなく7時間労働を実現しています。

時短が難しいとされている製造部門でも業務分担の見直しを計ることで、労働時間の短縮と効率化の両立を実現しました。

2.働き過ぎを防ぐ柔軟な働き方を推進するベネッセ

ベネッセでは「Value for Time」というメッセージを掲げて、時間の価値を高める働き方改革を進めています。事業部門ごとの月間の残業時間の目標設定、ノー残業デー設定、有給奨励日の設定など、部署と従業員が主導して柔軟な働き方を推進。

自社開発の勤怠共有ツールの導入、出社と在宅を選択できるハイブリッド勤務など、独自の取り組みを展開しています。

3.「全国、どこでも」を実現するトヨタ自動車

トヨタはこれまでの働き方改革を積極的に推し進めてきた会社ですが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、さらに柔軟な働き方のできる環境作りを進めています。

職場から離れた地域に住みながらリモートワークができる、FTL制度(Free Time and Location)を新設。職場からの距離制限が撤廃されたことによって、全国どこでも住みながら勤務することが可能になりました。

これまで単身赴任していた社員が自宅に戻って、仕事を続けることもできます。出社が必要になった場合は、距離不問で交通費が全額支給されるという画期的な制度です。さまざまなワークライフバランスに対応した柔軟な勤務形態といえるでしょう。

働き方改革の現状を把握し実現に活かそう

働き方改革とは労働環境を見直して、より働きやすい環境を作るための取り組みです。
長時間労働の是正、正社員と非正規の格差是正、多様で柔軟な働き方の実現を大きな柱として改革が進められています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、働き方改革の動きが加速しているのが現状です。しかし、これまでの仕組みや制度の根本的な見直しが必要であり、新たな課題や問題点が生じるケースも少なくありません。

人事部などの担当者を中心として現場の声を聞いて現状を把握し、課題を可視化して、その課題を解消しながら着実に働き方改革を進めていくことが求められます。