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従業員エンゲージメントの定義と向上によるメリット、高め方を解説

従業員エンゲージメントとは企業に対する社員の信頼と貢献意欲を表す言葉です。人材不足や働き方の多様化という状況下で注目を集めています。従業員エンゲージメントの定義と指標改善によってもたらされるメリット、構成要素、測定方法などを解説します。

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従業員エンゲージメントの現状と定義

従業員エンゲージメントとは、自分の勤務している会社に対する信頼感や貢献したいという意欲や情熱を示す指標です。

ここでは、現在の日本における従業員エンゲージメントが世界の中でどれくらいの位置を占めているのかということと、従業員満足度やロイヤリティという言葉とどのような違いがあるのか、より詳しい定義を解説しましょう。

世界でもかなり低い水準にある日本企業

米国の世論調査会社であるギャラップ社が2017年に発表した従業員エンゲージメントに関する国際比較調査で、日本は調査対象となった139カ国の中で132番目という低い水準にあることがわかりました。

日本の企業で熱意のある社員の割合は、わずか6%というインパクトの強い数字が出ています。ちなみに米国は33%、ロシアは27%となっていて、日本は際立って低い水準といえるでしょう。

エンゲージメントが低い水準になっている要因はいくつか考えられます。1つ目には年功序列の弊害、2つ目は組織が複雑化していて社員のストレスが大きいこと、3つ目は成果主義への移行がスムーズではなく、人事評価システムが整備されていないことなどです。

働き方の多様化が進行する中で、働きやすさ、働きがいのある職場環境の整備が求められています。

従業員満足度やロイヤリティとの違い

従業員エンゲージメントと従業員満足度やロイヤリティとはそれぞれ異なるものです。
従業員満足度は、会社の居心地の良さを表す言葉といえるでしょう。どれだけ会社の待遇や環境に満足しているかという社員の満足の度合いを表しています。

ロイヤリティは会社に対する帰属意識や愛社精神を表す言葉で、会社と社員との間に主従関係があることが前提となった言葉です。

従業員エンゲージメントは対等な関係に基づくものという前提があるため、従業員エンゲージメントとロイヤリティは関係性という点で大きく異なります。

従業員エンゲージメントが注目される2つの理由

従業員エンゲージメントが注目されている背景には、いくつかの日本の社会的な要因が関係しています。主なものは次の2つです。

  1. 慢性化している人手不足
  2. 働き方の多様化の進行

いずれもここ数年、顕著になっている傾向であり、これから先も継続していくことが予想されるものといえるでしょう。それぞれ詳しく解説します。

1.慢性化している人手不足

少子高齢化による労働人口の減少によって、人手不足が慢性化しています。構造的な問題なので、すぐに解決策を見出すことはできません。となると、会社に在籍している社員の流出をいかに防ぐかが重要なポイントになります。

従業員エンゲージメントを高めることによって、人材を確保・維持していくことは会社にとって最重要課題の一つといえるでしょう。

2.働き方の多様化の進行

働き方改革の推進とコロナ禍の影響により、働き方の多様化が進行しています。リモートワーク、ワーケーションなど、職場にしばられない働き方が一般的になるのと同時に、社員の意識も変わってきているといえるでしょう。

働きがいのある職場で働きたいと考える社員が増える傾向が目立ってきました。いかに働きがいのある職場を作っていくか、そしていかに従業員エンゲージメントを向上させて一人一人の社員の生産性を高めていくかが、企業に求められています。

従業員エンゲージメントを高める3つのメリット

従業員エンゲージメントを高めることで、企業にも従業員にもさまざまなメリットが期待できます。従業員にとっては貢献意欲がスキルの向上をもたらす効果もあるでしょう。達成感や満足感につながることも考えられます。

企業側にとっての主なメリットは以下の3つです。

  1. 企業の業績向上
  2. 顧客満足度の向上
  3. 人材の定着率上昇

それぞれ詳しく解説しましょう。

1.企業の業績向上

従業員エンゲージメントの高い社員は労働意欲も高く、質の高い業務を行う傾向があるため、企業の業績向上に貢献することが期待できるでしょう。

米国のギャラップ社の調査によると、エンゲージメントで高い数値を出している上位企業の25%と下位企業の25%を比べた時に、収益性や生産性の高さとエンゲージメントの高さとが比例しているとの結果も出ています。

2.顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントの高い社員は質の高い仕事を追求するため、会社が提供するプロダクトやサービスのクオリティも高くなる傾向があります。その結果、顧客満足度も高まることが期待できるでしょう。

顧客に喜ばれることは、従業員のモチベーションをさらに高まる結果にもつながります。さらに顧客満足度の向上は前述した企業の業績向上にもつながり、良いサイクルが生まれる相乗効果も考えられるでしょう。

3.人材の定着率上昇

従業員エンゲージメントの高さは、そのまま人材の定着率の上昇に直結すると考えられます。会社への貢献意欲が高いということは、現在の仕事へのやりがいを感じていることにつながるからです。

「働きがいがない」という理由で離職するケースは少なくありませんが、エンゲージメントの高い社員にはほぼ無縁の要因といえるでしょう。エンゲージメントの高い社員は、まわりに対してもいい影響を及ぼすことが期待できます。

意欲的に働いている人間が近くにことによって、職場に活気や一体感が生まれて、まわりの社員も働きがいを感じやすくなるケースも考えられるからです。

また、意欲の高さはスキルの向上にもつながるでしょう。優秀な人材の確保という観点でも従業員エンゲージメントを高めることがメリットになります。

従業員エンゲージメントを構成する2つの要素

従業員エンゲージメントとは会社への自発的な貢献意欲ですが、この意欲の源になっているものが何なのか、さらに細かく分析していくと、次の2つの要素に分けられることがわかります。

1.企業の理念やビジョンへの理解と共感
2.働きやすさと働きがいのある職場

この2つの要素を考察することが、従業員エンゲージメントを高めるためのヒントになると考えられます。それぞれ詳しく解説しましょう。

1.企業の理念やビジョンへの理解と共感

従業員エンゲージメントの高さと社員の企業理念やビジョンへの理解度や共感度の高さはおおむね比例すると考えられます。企業が描く未来に対して理解して共感することが、貢献しようという意欲につながるからです。

理念やビジョンの実現のために、自分は何をすべきなのか、何ができるのかと考えることによって、社員はポジティブに業務に関わることができるでしょう。そしてその業務に関わっていくことが、さらにエンゲージメントを高めることにつながると考えられます。

企業側は企業の理念やビジョンを社員に常日頃から説明することが求められるでしょう。社員に理念を理解してもらい、ビジョンを共感してもらうことが、従業員エンゲージメントを高めること、そして業績の向上につながるからです。

2.働きやすさと働きがいのある職場

会社が働きやすい職場を提供することが、会社に対する社員の信頼感を得ることにもつながるでしょう。また「ここは自分の働く場所である」という居場所にも似た感覚を持つことによって、業務に対するモチベーションが高くなることも期待できます。

働きがいのある職場環境が整備されていることは、そのまま貢献意欲に直結しているといえるでしょう。つまり働きやすさと働きがいがあることは従業員エンゲージメントを構成する重要な要素ということになります。

従業員エンゲージメントを高める5つの方法

従業員エンゲージメントを高めることは会社にとっては優先順位の高いミッションとなるでしょう。会社の業績の向上、顧客満足度の向上、人材の定着率の上昇など、多くのメリットが考えられるからです。

エンゲージメントを高めていく具体的な方法として、次の5つがあげられます。

  1. 企業理念やビジョンの浸透
  2. 公平かつ適切な評価制度の導入
  3. 快適な職場環境の提供
  4. スキル向上やキャリアアップ支援
  5. ワークライフバランスの整備

それぞれ詳しく解説します。

1.企業理念やビジョンの浸透

エンゲージメントを高めるためには、社員に対して企業理念やビジョンを浸透させることが重要です。経営者が直接、会社のサイトなどを通じて、自らの言葉で理念やビジョンを説明するなど、積極的に明示するのがいいでしょう。

なぜこの仕事をするのか、使命感や責任感を持つことが、エンゲージメントを高めることにもつながります。理念やビジョンを共有することによって、同じゴールに向かっていくという社内での一体感の醸成も期待できるでしょう。

2.公平かつ適切な評価制度の導入

公平かつ適切に評価されることが、会社への信頼や貢献意欲につながります。評価は賃金などのお金だけでなく、ポジションも含めてのものです。エンゲージメントの高い社員を責任のある立場につけることで、さらにモチベーションが高くなることも期待できます。

社員の能力や特徴とマッチした職務を任せることで、意欲も生産性も向上することが見込めるでしょう。社員が自分は適切に評価されていると実感できることも重要です。透明性の高い公平な評価システムを構築して、明示することも大切でしょう。

3.快適な職場環境の提供

従業員エンゲージメントを高める上で快適な職場環境を提供するのは大切なことですが、居住性の快適さを実現するだけでは十分とはいえません。職場満足度を上げることだけを行なっても、エンゲージメントを高めることにならない場合もあるからです。

社員のニーズを的確に汲み取って、必要なツールやテクノロジーを整備するなど、仕事をする意欲をより高める環境を構築することが重要になります。

4.スキル向上やキャリアアップ支援

スキルの向上やキャリアアップを支援することは、社員のエンゲージメントを高める上で有効な方法といえるでしょう。成長することによって、貢献意欲が増すことが期待できるからです。

そのためには社員の才能を高められるような環境、スキル習得の場を提供することが必要となります。社員のスキルが向上することによって、生産性が上がるという好循環も期待できるでしょう。

5.ワークライフバランスの整備

エンゲージメントを高める上では、社員のワークライフバランスの整備は必須です。心身とともに健康な状態でなければ、いい仕事はできません。業務に対する意欲や情熱もわいてこないでしょう。

業務時間の中でも適切な休息タイムを取り入れ、また年間を通しても長期的な有給休暇を設定して、社員がリフレッシュできる期間を設けることも必要です。ワークライフバランスを整備することが社員の意欲を高め、質の高い業務を行うことにもつながります。

社員としてもワークライフバランスを整備することによって、会社に対する信頼感が深まることも期待できるでしょう。

従業員エンゲージメントの指標と調査方法

従業員エンゲージメントを高めるためには、まず社員一人一人の現状のエンゲージメントを把握する必要があります。主観的な判断ではなくて、客観的に判断できる数値化された指標があるので、その指標に基づいて、対策を考えていくといいでしょう。

ここでは従業員エンゲージメントを表す3つの指標と、その指標を導き出す調査方法について、解説していきます。

従業員エンゲージメントの3つの指標

従業員エンゲージメントを表す指標はいくつかありますが、ここでは代表的なものを3つ紹介しましょう。

1.エンゲージメント総合指標

エンゲージメント総合指標は社員が会社をどれくらい評価しているかを表す指標です。主に以下の3つの質問で構成されています。

  • 会社を他人に勧めたいかどうかを表すeNPS(従業員ネットプロモータースコア)
  • 会社に対する総合的な満足度
  • 今の会社で継続して働きたいと思っているかを表す継続勤務意向

2.エンゲージメントレベル指標

この指標は、仕事に対してどれくらい熱意を持って取り組んでいるかを表します。

3.エンゲージメントドライバー指標

従業員エンゲージメントを向上させる要因を表す指標です。組織、職務、個人の3つに分かれていて、組織は人間関係や職場での環境など、職務は仕事の難易度、個人は自己肯定感や当事者意識についての質問で構成されています。

従業員エンゲージメントの調査方法

従業員エンゲージメントの調査方法として、もっとも多く使われているのはアンケートです。比較的手軽に時間をかけずに実施することができるメリットがあります。質問の数はあまり多くなると、回答者の負担が増えるので、2問から10問程度が一般的です。

質問内容は前述した指標に沿って、作成します。例えば、エンゲージメント総合指標のeNPSならば、下記のような質問です。

「あなたは自分が勤めている会社を、家族や友人にどのくらい、勧めたいですか?」

回答は通常、5段階ほどに分けられています。例えば、上の質問に対しての回答としては、「強く勧めたい」「ある程度勧めたい」「どちらでもない」「あまり勧めたくない」「まったく勧めたくない」などです。

こうしたアンケート調査は社内で行う場合と、従業員サーベイ(調査)を専門に行う調査会社に依頼する場合とがあります。社内で行う場合は企業によって、紙のアンケート、パソコン上のアンケートなどさまざまです。調査会社に依頼すると専門家が行うので、精度が高くなりますがコストもかかります。

従業員エンゲージメント調査を頻繁に行うものをパルスサーベイ、年に1回程度、大がかりに行うものをセンサスと呼び、この場合は質問を50項目以上に増やするのが一般的です。

調査が終わったら、すみやかに集計・分析を行い、社員にフィードバックします。また調査結果の指標から課題が浮き彫りになった場合には、従業員エンゲージメントを高めるための対策を講じることも必要でしょう。

従業員エンゲージメントを高めて業績向上につなげよう

従業員エンゲージメントとは社員の会社に対する信頼や貢献意欲を表す言葉です。企業理念やビジョンへの理解と共感、働きがいのある職場などの環境が、社員のエンゲージメントの高さを醸成します。

エンゲージメントが高いと、会社の業績向上や顧客満足度の上昇、人材の定着率の向上につながるなど、多くのメリットが期待できるため、会社にとってエンゲージメントを高めることは重要なミッションです。

社員にとってもエンゲージメントが高くなり、意欲的に業務に取り組むことによって、スキルアップにつながることも期待できます。人手不足、働き方の多様化という時代背景の中で、従業員エンゲージメントを高めることの重要性が増しているといえるでしょう。