人材の流動化が進み、企業は生き残りをかけて人材定着に向けた施策を考える必要があります。そこで、企業から人材が離れてしまう原因は何か、人材が定着するための施策として何が挙げられるのか、解説しましょう。
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人材定着(リテンション)とは何か
人材定着は、リテンションとも呼ばれます。リテンションとは、日本語に訳すと「保持」や「維持」を意味し、人事で使用する場合には人材の確保を指します。つまり、企業にとって優秀な人材を確保するための施策がリテンションなのです。
企業が人材定着を考えないといけない背景として、海外と日本における人材定着についての違いが挙げられるでしょう。日本では長年、年功序列や終身雇用制度など、新卒で一括採用してから職を割り振るメンバーシップ制度が一般的でした。これに対して欧米企業では、職を全うできるだけのスキルを持っているかどうかで採用が決まるジョブ型の雇用が通例であり、成果主義が採用されています。
日本は急速なグローバル化の波に飲み込まれ、人材獲得競争が激化している状況です。欧米のように人材の流動化が進んでいるため、人材定着のための施策が必要になります。
人材定着率
実際に日本企業で流動化が進んでいることを示すために、人材定着率をみていきましょう。定着率とは、離職率の反対語です。離職率が離職した従業員の割合を示すのに対し、定着率は企業に残っている従業員の割合を示します。
たとえば入社2年目の離職率が10%の場合、定着率は90%だと算出されるでしょう。定着率が低ければ低いほど、企業で人材の流動化が進んでいるといえます。
日本の人材定着率
日本の人材定着率は、厚生労働省が毎年発表する「雇用動向調査」からわかります。調査によると令和2年(2020年)の離職率は14.2%であることから、人材定着率は85.8%と算出できるでしょう。離職率の推移は平成18年(2006年)以降、14~17%を推移しています。
一般労働者とパートタイム労働者とでも離職率に違いがあり、令和2年の一般労働者の離職率は10.7%であるのに対し、パートタイム労働者の離職率は23.3%と高い数値になっているのが特徴です。
一見日本の人材定着率は高いと思われるかもしれません。しかし、日本をはじめとした14ヶ国の労働者の平均勤続年数をみると、アメリカは4.2年と短いのですが、ドイツは10.7年、フランスは11.4年と日本の11.9年と大差ありません。
正社員も非正規社員も定着しない現状
パートタイム労働者だけでなく、一般労働者も企業に長年定着していません。とくにコロナ禍により、日本企業の雇用がジョブ型へと急速に移っているといいます。
日本がメンバーシップ型雇用から脱却しジョブ型雇用へとシフトする背景には、先述したように人材獲得競争の激化が挙げられるでしょう。グローバル化により、市場価値に見合った報酬を企業が提示できないと、優秀な人材を獲得できたとしてもすぐに別の企業に転職しかねません。優秀な人材を囲うためには、ジョブ型雇用へのシフトが企業にとって急務なのです。
人材が定着しない原因
企業のグローバル化が雇用の流動化を後押ししていることをみてきました。企業は人材が離職することを食い止めることができないと思われるかもしれません。しかし、人材が定着しにくいことには企業内部に原因があります。
過多な業務量
人材が企業に定着しない理由として、まず業務量が一部の従業員のキャパシティを超えてしまっていることが挙げられるでしょう。
作業ペースは、従業員の能力に依存します。優秀な従業員ほど作業ペースは速くなる傾向にあるでしょう。そのため、優秀な従業員には多くの仕事が割り振られてしまいます。結果として、業務量の過多が生じてしまうのです。
優秀な人材にはさらに、プロジェクトへの参加など質の高い仕事が求められます。心身に負担が大きくなることから、健康を害するリスクが高まるのです。それゆえ、優秀な人材は退職せざるを得なくなります。
自分の意見が通らない
従業員自身の意見が通らないことも、人材が定着しない理由として挙げられるでしょう。
仕事に対するモチベーションが高い人材は、革新的なアイディアを持つ傾向があります。しかし、優秀な人材の意見がすぐ通るような風通しのいい社風でないケースもあるでしょう。その従業員が企業に入社して間もないから、あるいは実務経験が少ないからという理由で、せっかくのアイディアが一蹴されることもります。結果として、従業員のモチベーションは低下し、離職へとつながるのです。
ベテランの従業員が多い企業であるほど、こうした傾向にあるといえるでしょう。そのため、優秀な若手従業員の意見が取り入れられない状況になっていないかどうか、企業の経営者は確認しないといけません。
自分の希望しない仕事が押し付けられる
従業員は希望する業務に就くことができれば、仕事に対するモチベーションは向上するでしょう。しかし、希望しない業務が割り振られると従業員は自ら行動を起こさなくなります。その結果、上司からの指示がないと業務が進まず、仕事に対するモチベーションは低下するでしょう。
もちろん、従業員の仕事に対する取り組み方に問題がないとはいえません。しかし、従業員自身の希望を無視すれば、当然ながら従業員は離職してしまうでしょう。企業にとっても、仕事へのモチベーションの低い従業員を抱えることは、生産性の低下につながります。
人材を定着させる施策とは
人材の離職率が高い企業には、何らかの原因があるものです。では、優秀な人材を定着させるには、どのような施策を行えばいいのでしょうか。
1.会社のビジョンを共有
従業員に企業のビジョンを共有してもらうことが、人材を定着させる施策のひとつです。
企業のビジョンとは、例えば売上を100億円にするなど、企業が実現したい未来を体現したもので、経営者の企業理念が大きく反映されています。なお、顧客に満足してもらえる企業に成長させるという内容でも構いません。
企業のビジョンが従業員全体に共有されていると、企業の中で個々の従業員がどのように行動を取るべきなのかが見えてくるでしょう。さらに従業員がビジョンを共有して同じ方向を向いていれば、意見をまとめやすくなります。
一方、従業員としては自分の意見が採用されることでモチベーションが高まるでしょう。結果として、企業に残りやすくなるのです。
2.コミュニケーションしやすい環境づくり
社内でコミュニケーションが取りやすい環境を整備することも、人材が定着する上で重要な施策といえます。コミュニケーションとは、自分の意見や情報、ノウハウなど、頭の中に描いている考えを言語化し、他者に伝えることです。
職場において最良のコミュニケーションとは、従業員同士で情報やスキル、ノウハウを共有し、関係性を深めることにほかなりません。良好なコミュニケーションを維持できることで、企業は生産性を高め、売上に貢献できるでしょう。
社内でコミュニケーションが不足することは、従業員の離職にもつながります。給与や昇進など仕事の満足度が高くても、職場環境や対人関係に不満があれば、従業員は自社に満足できません。コミュニケーションを取りやすい職場づくりは、人材の定着率の向上につながるのです。
具体的には、能力開発を目的に上司と部下とのあいだで行われる「1on1ミーティング」や、先輩が新入社員に仕事の進め方から社会生活までアドバイスを行う「ブラザー・シスター制度」の採用が挙げられるでしょう。後述するように、飲み会やイベント、部活動の推進も施策になります。
3.ワークライフバランスの支援
企業が従業員のワークライフバランスを支援することも大事です。ワークライフバランスとは、仕事と生活とのバランスが取れていることを指します。
優秀な人材であっても、ライフスタイルはさまざまでしょう。家族や趣味といったプライベートな時間を作ることは、充実した人生を送る上で重要です。そのため、従業員の属性を理解してふさわしい制度を導入することが大事でしょう。後述するように、従業員が自己啓発のために長期休暇を利用して留学することや、こまめに休暇を取れる環境を整備することなどが具体的な施策として挙げられます。
4.スキルの向上を支援する
研修やセミナーを開催して、従業員のスキルアップを支援することも人材の定着率を上げることにつながるでしょう。新入社員や優秀な人材はモチベーションが高く、スキルを高めることに関心を持っています。従業員に本来備わっているスキルに加えて新しいスキルを学ぶ機会を与えることで、個々の従業員のモチベーションを高めるだけでなく生産性向上や人材育成にも役立つでしょう。
5.自律を促す施策づくりの促進と尊重
若手社員や優秀な人材の自律を促す施策づくりを整備することも、人材定着にとって重要です。先述したとおり、日本もメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へとシフトしています。そのため、これまでのように企業が主導して従業員の教育を行い総合的なスキルを身に付けさせるのではなく、自己研鑽を積んだ従業員を採用しないといけません。
企業は、従業員自らが自己啓発に取り組めるようにサポートをしながら、自律を促すことが必要です。具体的には、若手のアイディアを採用しながら要所で先輩や上司がサポートしたり、優秀な人材をプロジェクトに登用したりすることで、従業員の意識改革だけでなく、帰属意識を高めることにもつながります。
6.社内キャリアパスを構築
キャリアパスとは、人材育成の場面で従業員がどんなキャリアを積んでいくかを示す道筋を指します。人材の活用だけでなく定着させるためにも、社内でキャリアパスを構築することが重要です。
優秀な人材であれば、将来を見据えて仕事に取り組めます。職を極めるスペシャリスト志向の従業員もいれば、中間管理職のように部下を統率することを目指す従業員もいるでしょう。キャリアパスがしっかりと構築されていれば、従業員が何を目指すべきかという指針が立てやすくなり、人材定着にもつながります。
リテンション施策の事例
人材を定着させるための施策として、企業が実際に採用している事例を3つ取り上げてみましょう。
1.部活動
社内コミュニケーションの円滑化を目的に、部活動を導入する企業が増えています。部活動の目的として、仕事以外の交流を通して他の従業員の性格や、特技などを知ることが挙げられるでしょう。部活動で楽しい時間を過ごせば、企業への帰属意識が高まり、定着率アップに貢献できます。
最大級のQ&Aサイトを運営するOKWAVEのように、毎月一定額の補助を部活動に支給する制度を設置している企業もあります。
2.選択型人事制度
ソフトウェア企業であるサイボウズは働き方改革の一環として、ライフスタイルに合った働き方を従業員が選べる「選択型人事制度」を導入しました。これにより、28%だった離職率を4%未満にまで抑えることに成功したのです。
サイボウズが当初導入していたのが、定時に短時間働く、少し残業して働く、時間に関係なく働くなどの3通りから従業員が選択できるという制度でした。これをさらに推し進めて、在宅勤務制度や働く場所の自由化、さらには、子どもの入園式の日には午後からの出社が認められるといった「ウルトラワーク」など、従業員の置かれた状況に応じて働き方が選べるように環境整備が進んでいます。
3.福利厚生の充実
サイボウズが人材定着率の改善のために導入した施策には、福利厚生の充実が挙げられます。「育自分休暇制度」と名付けられた制度は、35歳以下の従業員に対して導入されたもので、いったん退職して最長で6年間はサイボウズに復職できるという内容です。
従業員はそのあいだに、転職や留学など、自分を育てるための活動を自由に行えます。6年経過してサイボウズに戻らないと決心すれば、企業は復職を強要しません。優秀な人材のチャレンジ精神を支援する制度といえるでしょう。
育自分休暇制度を利用した従業員が期間中に企業に戻りたくなった場合には、数ヶ月前に報告するだけですぐに復職できます。
リテンションマネジメントが重要
日本企業がグローバル化するとともに、企業は優秀な人材をどう囲い込むのかという課題に取り組む必要がでてきています。平均勤続年数が欧州の一部の国と遜色ないほど短くなっていますが、従業員のモチベーションを維持できれば自社に定着させることは可能でしょう。
ユニークなリテンション施策を導入して成功している企業もあるので、参考にして採用してみてはいかがでしょうか。
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