建設業界の採用は困難な状況が続き、有効求人倍率は高い数値を推移しています。主な原因は若者離れで、求人を募集してもなかなか集まりません。
今回は建設業の採用事情や、採用率を高めて人材を確保する方法について紹介します。
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建設業の採用は厳しい状況
建設業は採用が困難な状況で、人手不足に悩まされています。労働人口の減少により、多くの業界で人手不足の傾向がありますが、特に建設業の人手不足が目立つのが実情です。
不足しているのは主に現場で施工する職人と技術者で、有効求人倍率が6倍を超えるなど、他の業界を大幅に超える高い数字になっています。建設業界の採用が難しい状況について、詳しく見ていきましょう。
建設業の有効求人倍率
2021年8月の有効求人倍率は、「建設躯体工事」が8.58倍、「土木」が6.26倍、「建築・土木・測量技術者」が6.21倍と、いずれも高い数字です。全体の平均が1.07倍であるため、建設業がいかに深刻な人手不足なのかがわかります。
このような状況を改善するため、国や企業は作業の効率化など、さまざまな対策を講じています。
建設業で採用が難しい理由
建設業で採用が難しくなっている理由はいくつかありますが、その発端となった要因はバブルの時代まで遡ります。バブルの崩壊で建設業の需要が減り、人員を削減するという経緯がありました。景気が回復しても人手は増えず、需要だけが高くなって今日の人手不足の状況となっているのです。
また、若年層が集まらない、ハードなイメージをもたれているなど、業界特有の理由もあります。ここでは、建設業で採用が難しい理由について見ていきましょう。
1.需要が増えて人材が不足
建設業界では1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマンショックなどで、業界全体の需要が減りました。倒産やリストラが相次ぎ、多くの人材がこの時期に離れています。
その後は東日本大震災の復興工事や公共工事の増加などで需要は高まったものの、一度離れた人材は戻らず、今日まで人手不足の状態が続いている状況です。
統計では、1997年をピークに、2019年には約3割が減少しています。近年はやや増加傾向にはあるものの、ピーク時には及ばないのが現状です。
2.若年層が集まらない
人手不足のもうひとつの要因は、若年層が少ないことです。若年層の離職が止まらず、人材募集にも人が集まりません。29歳以下の従業員は全体の1割にとどまるというデータがあり、2016年から3年間で1万人減少しています。
若年層が集まらないのは、建設業に根強い「年功序列」の風潮や、労働量に対して賃金が安いことがあげられます。建設業界は他の業界と比較して幅広い年齢層が働いており、年齢の離れた従業員とは価値観が合わないという状況も少なくありません。
また、現場作業ではスキルアップの過程が長く、賃金が上がりにくいという事情もあります。低い賃金では仕事へのモチベーションも上がらず、離職の原因となるでしょう。
3.在職者の高齢化
若年層の減少とともに、在職者の高齢化という問題があります。2019年の従業員は55歳以上が約35%と、高齢化が進んでいる状況です。10年後にはその多くが引退をすることが想定され、さらに人手不足になるという懸念があります。
現在主流で活躍している職人や技術者が引退する未来を見据え、企業では若年層の採用を増やすためにさまざまな取り組みが行われています。
4.ハードなイメージがある
建設業の現場作業にハードなイメージがあるのも、採用が難しい理由です。重労働であることや、「きつい」「危険」「汚い」という3Kのイメージが根強くあります。
また、建設業は残業時間が多く、週休2日でない会社も珍しくありません。賃金と労働が見合わないことで、辞めていく若者が増加しているのが現状です。このような状況を受けて、近年は働き方を見直す企業も増えています。
建設業が採用を増やすためにできること
今後さらに深刻な人手不足が予想される建設業では、採用を増やすための対策が不可欠です。ハードワークというイメージがある労働環境を変える、福利厚生を整えて働きやすい職場にするなどの取り組みが急務です。
長く業界で活躍できるよう、スキルアップの支援も求められるでしょう。ここでは、建設業が採用を増やすためにできることについて紹介します。
1.労働環境を整える
採用を増やすためには、長時間労働やハードワークなどの環境を改善することが必要です。例えば残業や休日出勤がない職場を目指すなど、離職を防ぐ環境づくりが求められます。
国土交通省では「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、建設業の長時間労働を是正するために取り組みを行っています。
プログラムでは週休2日制の後押しや、適正な工期設定の推進を行い、労働環境の整備を支援しています。
2.採用の対象を絞る
戦力となる人材を採用するには、対象を絞ることも必要です。多くの人材を集めたいからといって採用の範囲を広げても、戦力にならなければ意味がありません。
建設業の現状を考え、建設学部出身など一定の知識を備えた若年層、もしくは資格と経験を持つ40?50代を採用の対象に設定するとよいでしょう。将来を担う人材や、即戦力となる人材を確保できる可能性があります。
3.福利厚生を整える
福利厚生を充実させることも、採用を増やすためのポイントです。福利厚生には、次のような種類があります。
- 住宅関連
- 健康・医療
- レクレーション
- 自己啓発
- 財産形成
- 社員食堂
- 特別手当
福利厚生の種類は多岐にわたるので、社員のニーズに合わせて導入するとよいでしょう。福利厚生の整備を進めることで、社員を大切にする働きやすい企業という印象を与えることができます。
4.スキルアップを支援する
体力が続かないという理由で若年層が離職しないよう、スキルアップの支援も大切です。30代を過ぎて現場を離れても別の業務にシフトして働けるよう、資格の取得をサポートしましょう。
学習できる環境を整備することで離職を防ぎ、採用を増やすことにも役立ちます。求職者はスキルを高めて長く働けることがわかれば、その職場で働く意欲も湧くでしょう。
5.IT化で従業員の負担を減らす
長時間労働や休日出勤をなくすためには、従業員の負担を減らす体制を作ることが大切です。デジタル化の動きは建設業でも進んでおり、現場作業にシステムを導入して業務を効率化する動きが広がりつつあります。
具体的には、現場監視カメラシステムの導入や打ち合わせのオンライン化、図面や書類の電子化などがあり、人手不足により増えていた業務の負担を解消することが可能です。
建設業はイメージを変えて採用を増やそう
建設業の人手不足は深刻な状況で、国をあげた取り組みも行われています。若年層が減少し、一線で活躍するベテラン勢も高齢化していく状況です。
採用を増やすためには、建設業の持つマイナスのイメージを変えていかなければなりません。長時間労働などの環境を変え、福利厚生を充実させるなどの対策を行いながら、必要な人材を確保していきましょう。
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