保育士は深刻な人材不足と言われ、採用は難しいのが現状です。行政でも処遇改善など保育士の人材確保に向けた取り組みを行っています。
今回は、保育士の採用を困難にする4つの理由について説明し、人材獲得に成功する方法も紹介します。
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保育士の採用は難しい状況がある
保育士は、全国9割の都道府県で不足しているのが現状です。厚生労働省が2014年におこなった調査では、保育の拡大に伴って必要な保育士の数は、2017年の年度末で約46万人を想定しています。これに対し、保育士の離職率などを考慮して計算した保育士数は約38.6万人と予想され、約7.4万人の不足と発表されているのです。
数年前の調査ですが、採用が難しい状況は変わりありません。ここでは、採用の現状と行政の取り組みについて見ていきましょう。
【厚生労働省】「保育人材確保のための 『魅力ある職場づくり』に向けて」
保育士の不足は深刻
2021年7月における保育士の有効求人倍率は2.29倍です。全職種の平均が1.11倍であるのに対し、倍以上の高い数字になっています。特に倍率が高いのは3.15倍の東京で、保育士の不足は深刻といえるでしょう。
人手不足の背景には、指定保育士養成施設卒業者のうち約半数は保育士として働いていないという実情があります。 保育士の資格を持ちながら、多くの人は保育士として働くことを希望していないのです。
行政の取り組み
このような状況を受けて、厚生労働省では保育士の人材確保のために取り組みを行っています。事業主に対し行われる支援は、主に次の2つです。
- 保育士の処遇改善・平均3%相当の処遇改善加算を実施
- 保育所の管理者を対象に行う雇用管理の研修
「処遇改善等加算」とは、保育士の離職理由に多い給与面の不満に対応する制度です。国から補助金として一定額が支給されるもので、支援策では給与の3%分が支給されます。
雇用管理の研修とは、保育士の離職防止につながる雇用管理などの研修です。
保育士の採用が難しい4つの理由
保育士の採用が難しいのは、保育士の資格を持ちながらも責任の重さや賃金の低さなどで就業を希望しない人が多いからです。
また、保護者との関係が難しいなど、保育士特有の悩みが保育士不足の原因になっています。保育士を採用するためには人材が不足する理由を知り、適切な対策を行うとよいでしょう。ここでは、保育士の採用が難しい4つの理由について紹介します。
1.責任が重い
保育士の採用が難しいのは、仕事の責任が重いことです。たくさんの子供を預かり、目を行き届かせなければなりません。体調不良になる子供もいれば、問題を起こす子供もいます。何かあれば、すぐに保護者への連絡が必要です。「大事な子供を預かることは責任が重い」と感じる人も少なくありません。
また、保育士は仕事の量が多いのも採用が難しい理由のひとつです。子供の世話をするだけでなく、保護者への連絡や事務作業、イベントの準備など細かい仕事がたくさんあります。保育園はデジタル化が遅れているところも多く、手作業で行う業務は手間がかかるものです。長時間勤務になりやすく、時間内で終わらず自宅に持ち帰って処理することも珍しくありません。
2.賃金が低い
保育士の賃金は他の業種に比べて低く、採用を難しくする大きな原因になっています。全職種の平均が329,600円であるのに対し、保育士の平均賃金は216,100円です。
責任が重く労働時間も長いにも関わらず、十分な賃金は得られていないといえるでしょう。保育士に現在の職場の改善希望を聞いた調査によれば、「給与・賞与等の改善」という回答が一番多く、約6割にのぼっています。
3.休みが取りにくい
保育士は休みが取りにくいのも、採用を難しくする要因です。近年、働き方は多様化しています。土日出勤やシフト勤務などで、子供を預ける時間帯もさまざまです。これに伴い、預かる時間帯も柔軟に対応する保育園が増えてきました。
子供を預かる時間に合わせて土日に出勤するケースもあります。さらに人材が少ないため長期休暇も取りにくい状況です。
4.保護者との関係が難しい
保育士は保護者と上手に付き合っていかなければなりません。さまざまな保護者がいて、なかには理不尽な要求をしてくる場合もあるでしょう。モンスターペアレントの問題もあり、自分だけで対応しきれない場合も出てくるかもしれません。
保護者との対応は施設が責任を持つ、保育士がいつでも相談できる体制を整えておくなど、保育士の負担を軽くする運用が求められます。
保育士の採用を成功させる方法
保育士の採用を成功させるためには、採用を難しくする原因を把握して適切に対処していくことが求められます。第一に、賃金のアップや業務の負担を軽くする工夫が必要になるでしょう。
さらに、人事評価制度を整えることで、仕事のモチベーションを高めることができます。ここでは、保育士の採用を成功させる方法について紹介しましょう。
1.賃金をアップする
保育士の賃金の低さは採用を難しくしている大きな原因であり、賃金アップは採用を成功させるために不可欠といえるでしょう。
行政でも改善の取り組みを行っていますが、有効求人倍率の状況を見る限り、まだ十分に従業員からの満足を得ているとはいえません。施設としては賃金を上げる、手当をつけるなど、労働環境の改善に向けて積極的に取り組むことが求められます。
2.業務の負担を軽減する
業務の負担が重く、長時間勤務が当たり前になっている状況を変えることも必要です。残業が多いと家事や育児などとの両立が難しくなり、離職につながることも少なくありません。負担を減らすためには、業務のデジタル化を検討してみるとよいでしょう。
近年はITシステムの導入を行い、業務の効率化や仕事量の削減に取り組んでいる施設も増えています。保育日誌や連絡帳、お便りの作成など手書きで行っていたものをデジタル化できれば、保育士の負担を大幅に減らすことができるでしょう。
3.人事評価制度を整える
人事評価制度を導入して保育士の仕事を評価することも、採用の成功につながる方法です。制度では評価基準を設け、自分の仕事について評価を行います。
さらに第三者が評価をつけ、お互いの評価をもとに話し合います。話し合いの中で課題が見つかり、今後の改善策について検討できるでしょう。公正な評価をもとに賃金や賞与を見直していくルールを設けるとより効果的です。
自分の仕事が客観的な数字で公正に評価することで、保育士のモチベーション向上につながります。
保育士は処遇を改善して採用を増やそう
保育士は資格を持っていても保育士の仕事を選ぶ人が少なく、採用が困難になっています。深刻な人手不足を解消するには、低い賃金など処遇を改善するなどの対応が求められるでしょう。
業務の負担を減らすことも大切です。デジタル化を進めている施設も増えているため、労働環境改善のために導入を検討してみるのもよいでしょう。
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