雇用保険加入の対象となる労働者は、必ず雇用保険に加入する手続きを行わなければいけません。しかし、正社員や非正規など雇用形態によって加入条件が異なることもあります。対応が遅れると罰金が課せられる場合もあるため、スムーズに対応しなければいけません。そこで今回は、雇用保険の加入条件や必要な書類について確認していきましょう。
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雇用保険加入における3つの条件
雇用保険とは労働者が失業し収入がなくなった場合、次の仕事に就くまでに必要な給付を受けられる保険です。労働者は雇用保険に加入しておくことで、経済的な負担やダメージを抑えられます。
ただ労働者の生活の安定を保証してくれる雇用保険ですが、すべての人が加入できるわけではありません。ここからは、雇用保険加入における条件を確認していきましょう。
1.最低31日間以上働く予定である
従業員が入社してから31日間以上働く予定があるときは、雇用保険に加入できます。ただ、継続的に31日間以上働かないことが明らかな場合は、加入の条件には該当しないため注意が必要です。また、雇用契約において更新規定がなく、31日未満で雇い止めする可能性があることが明記されている場合も雇用保険加入の条件に該当しません。
2.所定労働時間が
所定労働時間とは、契約で定められた労働時間のことで始業時間から終業時間までを指します。労働基準法で策定されている法定労働時間は、1日8時間、週40時間と定められており、企業はこの範囲内で自由に設定することが可能です。
労働者を雇用保険に加入させたいなら、所定労働時間が週に20時間以上でなければいけません。ただ、契約上の所定労働時間が基準になるため、繁忙期などで一時的に週20時間以上働いたとしても雇用保険加入の条件は適用されないため注意が必要です。
3.学生でないこと
短大や大学、大学院など高等教育を受ける学生は雇用保険に加入することはできません。ただ、例外として卒業前に就職し学校を卒業した後も働く予定がある学生の場合は加入対象になります。
例えば、学生が卒業前に企業から内定を受けた場合は、卒業見込み者として学校を卒業する前から勤務をスタートさせることも少なくありません。このような場合は、卒業後に引き続き同じ企業で勤務することが明らかなため、雇用保険加入の条件を満たしていると判断されます。
雇用形態別に加入条件は異なる
正規雇用や非正規雇用など雇用形態によって雇用保険加入の条件は大きく変わります。また、労働者の雇用形態が変わるときは雇用保険の対象外になることもあるものです。企業側がしっかり理解しておかないと、後に従業員との間でトラブルに発展することもあります。ここでは、雇用形態別に異なる加入条件を確認していきましょう。
正社員など正規雇用の場合
正規雇用とは、雇用期間の定めがなくフルタイムで働く雇用形態のことです。企業から内定を受けた労働者は、転職や解雇されない限り定年まで同じ企業で働き続けられます。
正規雇用の場合は、すべての人が雇用保険に加入することが必要です。また、本契約に進む前の試用期間中でも企業から報酬を受けている労働者の場合は、雇用保険加入における3つの条件を満たしている労働者として適用されます。
パートやアルバイトなど非正規雇用の場合
非正規雇用とは、正社員以外のすべての従業員のことを指します。いわゆるパートやアルバイト、派遣社員などで、期間を定めて雇用契約を結んでいる従業員のことです。非正規も正社員と同じく3つの条件を満たさなければいけません。
また3つの条件に加えて、以下に該当する場合も雇用保険に加入できます。
・契約時に雇用期間が決まっていなかった
・契約の更新時点で31日以上働く予定がある
・雇用契約が延長され31日以上働くことになった
また、入社してから週20時間以上に働いていた人が契約を変更して週20時間未満になることもあるでしょう。このような場合は、条件を満たしていないため労働者は雇用保険の対象から外れます。
さらに、通常は週10時間ほど勤務していた人が繁忙時期には週20時間働いた場合、雇用保険加入の条件に該当します。しかし、この場合、雇用保険は適用されません。あくまで契約書に記載された所定勤務時間が雇用保険の対象となります。
1日単位で雇用する日雇労働者の場合
日雇労働者とは、1日単位で仕事に携わったり30日以内の期間で雇用されたりする労働者のことです。日雇労働者の場合は、正社員や非正規雇用とは異なる日雇労働保険が適用されます。日雇労働保険への加入には日雇手帳が必要で、ハローワークの窓口で交付されます。
ただ、同じ会社で31日以上継続して働いていたり2ヶ月以上続けて18日以上勤務したりしている場合は、正社員や非正規雇用と同じように一般被保険者として雇用保険加入が必要です。雇用保険への加入は労働者本人がハローワークに出向き手続きを行います。
季節に影響される季節労働者の場合
季節労働者とは、季節に応じて仕事をする人のことです。また、1年のうち4ヶ月以上の雇用契約を結んでいたり所定労働時間が30時間を超えたりする人も季節労働者に該当します。これらの条件に該当する場合は、短期雇用特例被保険者となり雇用保険に加入するのが通常です。
季節労働者が職を失ったときは、失業手当の代わりに特例一時金と呼ばれる給付金が受け取れます。ただ同企業に継続して1年未満の期間で雇用され、短期間で入社や退職を繰り返している場合は原則として一般被保険者として取り扱うことになるため注意しましょう。
雇用保険対象外になる労働形態もある
政府が推奨する働き方改革により、労働者の働き方も多様化しています。企業によっては業務委託契約を結んだり個人事業主に業務を依頼したりすることもあるでしょう。ただし、業務委託契約の場合や個人事業主は雇用保険の対象にはなりません。
なぜなら、雇用保険に加入できるのは、原則として雇用関係によって収入を得る労働者のみだからです。雇用関係とは、労働者が雇用主のもとで働き賃金や給料を受ける関係を指します。業務委託契約の場合や個人事業主などは雇用関係に該当しないため雇用保険の対象外になってしまうのです。
また、代理店やフランチャイズの加盟店も状況によっては、雇用保険の対象外になるケースもあります。そもそも本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)はそれぞれ独立した事業体です。加盟店で働く労働者は、加盟しているだけで本部から直接賃金や給料を受け取っているわけではありません。
このように代理店やフランチャイズのオーナーが独自で利益を追求している場合は、個人事業主とみなされることがあるのです。このようなケースでは、本部(フランチャイザー)との雇用関係は成立していないと判断されるため、雇用保険には加入できません。
65歳以上の従業員の雇用保険はどうなる?
2017年1月に雇用保険の適用拡大により制度が改正され、65歳以上の従業員も雇用保険に加入することが義務化されました。ただし、保険に加入するには条件があり、該当する場合は高年齢被保険者として雇用保険に加入する必要があります。ここでは、雇用保険料や加入条件、基本手当との違いなど、65歳以上の雇用保険を確認していきましょう。
条件を満たせば雇用保険に加入する
65歳以上の従業員の雇用保険加入は、下記の条件を満たさなければいけません。
・31日以上雇用される見込みがある
・1週間の労働時間が20時間以上である
事業主は雇用保険被保険者資格取得届を、従業員を雇用した翌月の10日までにハローワークに提出しましょう。労働者の勤務時間が変更となっていて条件を満たした場合も、同様の手続きが必要です。
高年齢被保険者における雇用保険料
65歳以上の従業員が、高年齢被保険者として雇用保険に加入した場合、通常であれば雇用保険料の支払いが求められますが、2020年3月までは支払いが免除となっていました。ただし、2020年3月以降は、他の労働者と同様に雇用保険料が課せられます。
なお、雇用保険料の金額は変更されることがあるため、正しい金額を知りたいという場合は都度確認しましょう。
従業員が雇用保険加入で得られる利点
雇用された労働者は雇用保険に加入することで、さまざまな利点が得られます。雇用保険加入における労働者の主な利点は、以下のとおりです。
・退職後に失業給付金が支給される
・教育訓練給付金が支給される
・他にも給付金を受け取れる
企業で働いている間は利点に感じられないこともあるかもしれませんが、労働者が失業や退職した場合に得られるものは多いです。雇用保険加入におけるそれぞれの利点を確認していきましょう。
退職後に失業給付金が支給される
雇用保険に加入することで、退職後に失業給付金が支給されます。申請手続きを行えば給付金がもらえるため、すぐに転職先が見つからなくても生活に支障が出ることはありません。ただし、失業給付金で支給される金額は、会社や個人都合などの退職理由、保険加入期間、給料の金額などにより、受け取れる失業手当や受給開始時期が大きく異なります。
教育訓練給付金が支給される
特定の条件を満たす必要はありますが、教育訓練給付金を受け取れるのも従業員が雇用保険に加入する大きな利点でしょう。教育訓練給付金とは、厚生労働大臣が指定した教育訓練講座を受講したときに受講料や入学料などの一部を支給してくれるものです。教育訓練講座では、介護福祉士や保育士、美容師、建築士などさまざまな分野の勉強ができます。なかなか転職先が見つからない方や手に職をつけて再就職を目指す人に最適な制度です。
他にも給付金を受け取れる
受け取れる給付金は、失業給付金や教育訓練給付金だけではありません。高年齢雇用継続給付や育児休業給付金、介護休業給付金なども受け取れます。高年齢雇用継続給付は、60~65歳までの賃金の低下を補う給付金のことです。
育児休業給付金は、労働者が育児休業中に申請手続することで受け取れる給付金のことをいいます。特に近年は出産後に働くことを決断する女性も多いため、子供持ちの共働き世帯にとっては頼りになる給付金だといえるでしょう。
介護休業給付金は、職場復帰を前提として家族の介護をするために介護休業を取得した労働者に支給される給付金です。介護をしている間は、当事者に付きっきりになることも増えるため昼間に仕事ができる状態ではありません。このように生活の安定を保証してもらえるのは従業員にとって大きな利点といえます。
雇用保険加入時に揃えるべき必要書類
従業員を雇用保険に加入させる場合は、雇用を開始した翌日から10日以内に管轄内のハローワークで雇用保険の手続きを行う必要があります。そして、雇用保険加入の手続きを進めるには、まず以下の必要書類を揃えなければいけません。
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・労働保険関係成立届の控え
・法人登記謄本・登記事項証明書
それぞれの特徴を確認していきましょう
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険適用事業所設置届は、従業員を雇用したら必ず提出しなければいけない書類です。従業員を雇用した翌日から10日以内の提出が義務付けられているため、期限を超えないように注意しましょう。雇用保険適用事業所設置届に記載すべき内容は、以下のとおりです。
・法人番号
・事業所の名称
・雇用保険の適用事業所となった年月日
・労働保険番号
・事業の概要
・その年度の1日の平均従業員数
・賃金締切日
雇用保険適用事業所設置届を提出するときは、会社の謄本や被保険者証、出勤簿、賃金台帳、労働者名簿なども必要となります。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の加入対象者を雇用するたびに提出しなければいけません。提出期限は雇用を開始した日、または雇用保険の加入要件を満たした日の翌月10日までです。
雇用する時期によっては期間が短くなる場合もあるため、超過しないように注意しましょう。雇用保険被保険者資格取得届を提出すると、雇用保険被保険者証と雇用保険資格取得等確認通知書が交付されます。
労働保険関係成立届の控え
労働保険が適用される事業を展開する場合は、労働基準監督署に保険関係成立届を提出する必要があります。提出期限は保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に提出しなければいけません。
労働基準監督署に書類を提出した際、労働保険関係成立届の控えを受け取れます。その控えはハローワークに提出する必要があるため、雇用保険適用事業所設置届を提出する際に合わせて提出してしまうのがいいでしょう。
法人登記謄本・登記事項証明書
登記簿を法務局がコピーし認証したものが法人登記謄本で、登記情報がすべて記載されているのが登記事項証明書です。名称は異なりますが、証明内容に大きな違いはありません。
雇用保険加入の手続きを行うときは、どちらか一方を提出します。法人登記謄本や登記事項証明書は法務局の窓口で取得できますが、1通につき600円の手数料が必要です。
加入義務を怠ると罰則が課せられる?
条件を満たす対象者でもあるにも関わらず企業が加入義務を怠っている場合は、罰則を課せられる可能性があります。企業が受ける罰則は、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金です。
雇用保険の未加入で起こりやすいのは、「うっかり加入手続きを忘れていた」「労働条件が変わったにもかかわらず、加入手続きを行っていなかった」「外部に依頼漏れがあった」など、多くの場合はケアレスミスです。
通常、雇用保険は、過去2年間まで遡って加入できます。会社の怠慢が理由で雇用保険に未加入の場合は、2年以上前まで遡って加入することが可能です。ハローワークで事情を説明し、未払い分の保険料を納めれば給付金や手当を受け取れるようになります。
雇用保険未加入で起こり得る問題
雇用保険への加入を怠ることで、従業員にもさまざまな問題が起こります。例えば、育児休業給付や介護休業給付、教育訓練給付金をはじめ、失業手当や就業手当なども一切受け取れません。
雇用保険は企業の加入希望の有無にかかわらず、条件を満たすすべての従業員は雇用保険への加入手続きを行う義務があります。雇用保険の未加入は、従業員に迷惑をかけることになるため忘れずに手続きを行いましょう。
雇用形態ごとに加入条件を確認しよう
雇用保険加入の対象となる従業員を雇う会社は、加入手続きを期限内に行う義務があります。ただ雇用形態によって加入条件は異なるため、従業員を雇用したらしっかり確認することが必要です。
雇用保険加入の手続きには、必要書類を集めて記入しなければいけないことも多いため計画的に作業を進める必要があります。期限を大幅に超えてしまうと、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を課せられることもあるため十分に注意しましょう。