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男性版産休で企業がするべきこととは?法改正の内容や企業のメリット

育児・介護休業法の改正により、男性版産休の制度が開始されます。育休を取得しやすい雇用環境の整備や従業員への制度説明が義務化される制度です。

本記事では、改正の内容を詳しく説明し、企業が行うべきことやメリットについて紹介します。

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男性版産休は新たに導入される制度

2022年4月より、男性版産休が導入されます。育児・介護休業法の改正により新たに設けられる制度で、男性の育児休業取得率向上を目指すものです。企業に対し、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備と制度の周知を義務づけています。

ここでは、男性版産休とはどのような制度なのか、導入の背景とともに詳しく見ていきましょう。

「育児・介護休業法」の改正で創設

男性版産休は育児・介護休業法の改正により新しく創設されるものです。2021年6月に改正案が可決され、成立しました。

男性の育児休業取得を促すことを目的とし、子の出生から8週間以内に最大4週間の休業を取得できる「出生時育児休業」の新設が柱となっています。
男性版産休は原則として休業の2週間前までに申し出ることが必要で、分割して2回取得することが可能です。

改正は段階的に施行され、本格的に制度の導入が開始されるのは2022年10月からとなっています。

「育児・介護休業法」とは

「育児・介護休業法」とは1992年に「育児休業法」として施行され、1995年に介護休業を加えた「育児・介護休業法」に改正された法律です。その後も少子高齢化や仕事と家庭の両立など時代のニーズに合わせ、いくつもの改正が行われています。

育児や介護をする労働者が仕事と両立できるよう配慮し、働き続けられるよう支援する目的で運用されています。

男性版産休導入の背景

2022年の改正が行われた背景には、男性の育児休業取得率が低いことがあげられます。厚生労働省による令和元年度の調査では、女性の育児取得率が83%であるのに対し、男性はわずか7.48%です。

育児休業を取得するのはほとんどが女性で、育児によりキャリアの中断を余儀なくされているという実情があります。男性の積極的な育児を奨励し、女性の社会進出を促すというのが法改正の目的です。

【参考】厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」

パパ休暇との違い

もともと育児休業には「パパ休暇」という特例があります。妻の産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、2回目の育児休業を取得できるという制度です。通常の育児休業の取得は、原則として子の出生につき1回限りですが、パパ休暇は特段の理由がなくても2回取得できます。

パパ休暇は今回の改正と同じく、夫婦で子育てする体制を整えて女性の職場復帰をサポートすることを目的に設けられた特例です。

今回の改正はこのパパ休暇を発展させたもので、2022年4月の施行とともに現行のパパ休暇は廃止となります。

男性版産休の内容

男性版産休は現行の育児休業とは別に取得でき、新たな枠組みの創設となるものです。企業には、男性が育休を取得しやすい雇用環境の整備や周知・意向確認が義務づけられます。また、分割取得が可能になるなど、柔軟な取得ができるよう配慮されているのが特徴です。

ここでは、男性版産休の内容について詳しく見ていきましょう。

1.新たな枠組みの創設

男性版産休は現行の育児休業とは別に、新たな枠組みとして創設される制度です。現行制度では子供が1歳になるまでの最長1年間の育休取得ができますが、新たに子の出生後8週間以内であれば、4週間までの取得ができます。

また、2回に分けた分割取得が可能であること、現行の育休制度では1カ月前の申請が必要なのに対し男性版産休では2週間前になることなど、取得しやすいのが特徴です。

2.育休を取得しやすい雇用環境の整備

改正は段階的に施行されますが、まず4月にスタートするのは休業を取得しやすい雇用環境の整備です。改正により男性版産休と現行の育休制度について、企業には休みを取得しやすい雇用環境の整備が義務づけられます。企業は希望する期間の休業を取得できるよう、配慮しなければなりません。

また、自分または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、企業は休業の制度について説明し、育休を申請するかどうか確認することも必要です。

説明や取得意思の確認は、育児休業の取得を控えさせるような形で行うことは認められません。

これらの具体的な方法は、複数の選択肢の中から選ぶことが予定されています。

3.育児休業の分割取得

男性版産休は2回の分割取得ができますが、改正では現行の育児休業も分割取得が可能になります。男性版産休と合わせると、男性の場合は4回の分割ができるということです。休業取得を促進するため、より柔軟に取得できるようになっています。

また、現行の育休では1歳を過ぎても保育園の入園先が見つからない場合に休業の延長ができますが、これまでは休みを開始する日が限定されていました。これが改正により、各期間の途中からでも取得できるように変わります。夫婦の都合の良い時期に育児の交代ができるようにという配慮です。

4.休業取得状況の公表を義務化

2023年4月からは、常時雇用する労働者数が1,000人を超える企業は、育児休業取得の内容についての公表が義務づけられます。

これまでは、優良な子育てサポート企業として厚生労働大臣 から「プラチナくるみん認定」を受けた企業だけが取得状況を公表していましたが、改正後は公表の対象が格段に増え、取得状況がより明らかになります。公表の義務化により、より休業取得が推奨されることになるでしょう。

5.有期雇用労働者の取得要件を緩和

これまで、育児・介護休業は以下の2点が取得要件とされていました。

  • 継続して雇用された期間が1年半以上であること
  • 子どもが1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと

2022年の改正では1の要件がなくなり、パートや契約社員など有期雇用労働者も休業取得の対象となります。育休取得できる人の範囲を広くして、積極的な子育て支援を図る趣旨といえるでしょう。

法改正後に企業が行うべきこと

2022年4月からの施行に際して、企業は休業の申し出や取得をしやすい雇用環境を整備しなければなりません。制度について従業員に説明し、育休取得を促進することも必要です。新たな義務ができることで、運用体制の整備など早めに準備していかなければなりません。

ここでは、法改正後に企業が行うべきことについて紹介します。

従業員への制度説明

2022年の改正で大きく変わるのは、育児休業の申し出をしやすくする雇用環境の整備が義務化されることです。これまでは努力義務に留まっていましたが、本格的に制度の整備を進めなければなりません。

会社や上司が育休に対して理解し、気兼ねなく休業できるような職場の雰囲気づくりが求められます。

雇用環境の整備としては研修の開催や相談窓口の設置など、いくつかの選択肢から選択して行うことが予定されています。

育休取得の促進

現行の育休制度では妊娠・出産について事業主に申し出た場合、制度について説明するかどうかは努力義務となっていました。それが今回の法改正では義務化され、制度についての説明と、取得するかどうかの意向確認は必ず行わなければなりません。

周知の具体的な方法としては、面談での制度説明や書面による情報提供など、複数の選択肢から選ぶことが予定されています。

男性版産休の創設による企業のメリット

男性版産休の創設により男性が育休を取得することで、企業はいくつものメリットが得られます。家族と過ごす時間が増えることは仕事への活力を生み、従業員のモチベーション向上につながるでしょう。従業員同士が協力し合う職場環境になるのもメリットです。

また、男性の育児を支援している企業は対外的なイメージも良くなります。ここでは、男性版産休の創設で得られる企業のメリットについて見ていきましょう。

1.従業員のモチベーションが上がる

仕事と子育ての両立で家族と過ごす時間が増えることで、家族生活が豊かになります。働くことへの活力が生まれ、仕事へのモチベーションが上がるでしょう。子育ての機会を与えてくれた企業に対し満足度が高まり、帰属意識も高まります。

モチベーションアップは離職率の低下にもつながり、従業員が意欲的に働くことで生産性が向上するのもメリットです。

2.協力し合う職場環境になる

育児休業する従業員の仕事を補うために、ほかの従業員が協力し合う職場環境が実現します。育児休業だけでなく、誰かが休むときは助け合う風土が生まれて結束力が強くなるでしょう。
業務を分担することで属人化も解消され、誰もが臨機応変に業務をこなせるようになるのもメリットです。

また、休業している従業員の業務をこなすため、仕事に対し効率的に取り組むようになり、長時間労働の抑制にもつながります。

3.企業のイメージが良くなる

男性が育児休業を取得する企業は、従業員を大切にしているというメッセージになります。働きやすい職場というイメージを与え、求職者からも注目されるでしょう。

少子高齢化で労働人口が減少するなか、優秀な人材を確保するのは大変です。福利厚生の充実は会社選びの際に重視するポイントであり、人材不足の解消につながります。

男性版産休導入に向けて準備を進めよう

育児・介護休業法の改正により、男性版産休の導入に向けた準備が必要になります。休業を取得しやすい職場環境にするために、具体的な体制の整備を考えなければなりません。職場全体に休業への理解を浸透させ、サポートし合う体制を整えましょう。

男性版産休は従業員にとってライフワークバランスを図るメリットがあると同時に、企業にとっても多くのメリットがあります。早めに準備を進めましょう。